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(136)心のケア

(136)心のケア

2013/03/07

今年も3.11.がやってくる。神戸に住む私は、どうしても1.17.のことを思い出してしまう。特に、タックン(仮名)のことを。

タックンは1歳で両親が離婚。母、祖母とともに暮らすも、3歳のとき、母が病気で他界。おばあちゃんが情緒不安定なところや発達の遅れを心配し、たどりたどって、ウチに入会。緘黙、消極内向、無感動、無関心。でも、おおらかに、優しく、焦らず、そんな対応に徐々に言葉も、表情も、感受性も豊かに。タックン、いい感じ。

ところが、入会一年後にあの地震。幼児部では半数以上の家庭が音信不通。でも、3日経ち、1週間経ち、みんなに連絡が取れるように。でも、タックンだけが連絡が付かない。住んでいた団地は半壊。でも部屋には人の気配はない。

数か月経って、おばあちゃんから電話。彼女は足を骨折し、入院。タックンは遠い親戚をたらい回しになっているそう。先生、戻ったら、また、助けてやって。結局、タックンは地震半年後に帰ってきた、元の緘黙児に戻って。

タックンのトレーニング後、指導員が堪えきれずに泣きだした。いろんな色で絵が描けるようになっていたのに、と彼女から手渡された絵は、黒とこげ茶で塗り込まれた瓦礫の山だった。ゆっくり、穏やかなケア・カリキュラムの再開。

さまざまなトラブルで子供は痛んでいく。家庭内の不和も身辺の不幸も大災害も、子供の心を蝕んでいく。神から、親から授かった才能が実を結ばない。タックンは小学校卒業までウチに通った。年賀状には、春から大学院に進学、と。

阪神大震災は局所的だったから、回復も早かった。でも、東日本大震災は、はるかに厳しい気がする。子供たちの声は小さいから、心の傷は見えにくいし、傷の深さに気づかない。

ツイート2013/03/07

 

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